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09.06.19 クローバーフィールド/HAKAISYA [本や映画、音]

スタートレックの感想文で「ドストライクだった」って書いたら、どうドストライクだったのか説明して、っていうメールをもらったよ。

ネタバレ満載だから注意してね。


DVDにはもう一つのエンディングも収録!

ストーリーはみんな知ってる?
基本的にはニューヨークのマンハッタン島に謎の怪獣が上陸。
逃げ惑う人々の様子を、ロブっていう主人公を軸に描いていく、ってお話し。

ロブはIT系の企業に勤めてる。どうやら東京に栄転らしくて、みんなでそのお祝いをサプライズでやろうと。映画はそのパーティーから始まるよ。

で、ハッドっていうこれまたちょっと冴えないキャラがパーティーの間、ロブへの祝辞を参加者から集めてこいってビデオを渡される。
ホントはロブの兄ちゃんのジェイソンがその係だったんだけど、ジェイソンはこのめんどくさい役目からまんまと逃げちゃうわけで。
そのへんがハッドのどんくささ。
と、同時に最後まで律儀にビデオを回し続けてるコトへのキャラ設定になってるんだけど。

ロブは数週間前にベスって女の子といい関係になったけど、東京に行くからってそれ以上深くはつきあわないようにするんだよね。
で、ベスはそれを知らされてなかったみたいで。聞いてからも、ロブの栄転をじゃましないように身を引き気味にする、と。
で、ちょっともめてベスはパーティーの途中で家に帰っちゃう。

さあ、お話しはここからだよ。
ニューヨークを異変が襲う。何が何だかわかんないけど轟音がして遙かかなたで爆発が起きる。
一瞬、911を思わせるよね。
実はこのあたりも誘導になってる。
これがパリやロンドンだったら、このリアル感はないかもね。

さて、ロブたちが外に出てみたら何か大きなモノがビルにぶつかりながら飛んできて、道路に落下。
何かと思ったら自由の女神のアタマだったよ!
こっからはカオスが徐々に加速していくよ。
最初は戸惑いながら逃げた方がいいんじゃない?ってくらいだったけど、そのうち街は爆発の閃光と轟音に包まれる。
その頃にはみんなパニック寸前。
とにかくマンハッタン島から逃げようって話になるんだけど、ブルックリン橋が崩れてみんな島内に孤立。
そんな中、ロブはベスに電話。
そしたらベスは自宅で大けがを負っていて動けない、ってコトが分かる。
で、ベスを助けに行こうとするんだよね。

その頃、街の中には軍隊がじゃんじゃん登場。
銃やミサイルを撃ちまくって、ビルの向こうのナニモノかを攻撃してる。
で、このあたりから異変の原因が巨大な怪獣だってコトが分かってくるよ。
みんな街から脱出しようとしてる。けど、ロブたちは人の流れに逆らって、ベスのアパートに行く。
その途中で変な生き物には襲われたりして大変。

最終的に軍隊はニューヨークを爆撃して、怪獣を街ごと焼き払おうとするよ。
ベスを助け出して脱出をはかったロブだけど、乗ってたヘリが怪獣にたたき落とされて万事休す。
刻々と迫るニューヨーク爆撃作戦の時間。

ここまでハッドが実に丁寧にすべてを記録。
そしてラストは映像がぷっつり切れる、と。

映画はこの映像が、
「かつてセントラルパークと呼ばれた場所」
で見つけられたっていう形。
映像は事件の目撃記録として国防総省の管轄下にあって「クローバーフィールド」っていうコードネームで呼ばれてる。

ストーリーとしては、限られた条件の中で誰かが誰かを助け出すっていう救出シチュエーション。
異変が起こったのは深夜で、ラストは夜明けのセントラルパーク。
だから物語はある夜の話、なんだよね。

こういうドラマはスピード感が命だからね。
J.J. エイブラムスって人はそのへんのことがよく分かってるみたいで。
異変が起こってからは、とにかく登場人物たちは走るか叫ぶかしてるよ。
もう休憩はナシ!みたいな。
(途中で一息入れるけど、その静けさが別の恐怖に繋がるってのも良くできてる!)

で、普通は謎を解いて、主人公は逃げ切っておしまい、なんだけどね。
そうはならない。
怪獣の正体とか分からないし。

そりゃそうだよね。
もしも本当にニューヨークを怪獣が襲ったとしても、末端の一市民はその正体も、怪獣がどこから来たのかも、いったい何が起こってるのかも分からないからね。
この映画を見てる時に僕らはロブだし、ロブを撮ってるハッドなんだよね。
主人公たちが見てる風景の疑似体験だから、ロブが知らないことは僕らも知らない。
そんだけ。
それを「リアル」ととるか、「いいかげん」ととるかで、この映画の評価は変わってくるかも。

それから。
この映画、音楽がないんだよ。エンディングまでノーミュージック。
言われてみれば、なんだけど、ハッドが記録したホームムービーだもん。
音楽なんて入るわけがないよね。
そのあたりもリアルな演出。
同時に「映画」としての形よりも、「ホームムービー」としての体裁を優先。
だけど音楽がないことに気づかせないほど、いろんな音が濃密に詰まってるよ。
このへんは効果音を何重にも重ね録りしてるんだと思うな。


普通、映画ってのは何かを示唆してたり、象徴してるよね。
そういうのがいい映画なんだと思うよ。
だけど「クローバーフィールド」には何もない(笑)
もうね、笑っちゃうくらいにスカスカ。
ストーリーは異変→逃げる→救出に向かう→助ける→逃げる→脱出失敗→チーン。
以上。
いくつも矛盾があるし、そりゃねぇだろ~~!って箇所もたくさん。

なのにね。釘付けにされるよ。
ひとつはやっぱり脚本が上手い!
ありがちな風景の中で起こる突拍子もない出来事を、
(ニューヨークは実際に、それを体験したけどね)
ストーリーの薄さを感じさせない場面展開の早さでフォローするよ。

中身はないけど、物語の展開・切り取り方が上手いから、けっこう引きずり込まれっぱなしだよ。
映画自体も実質75分くらいの短さだしね。
何をどう見せれば退屈しないかを知ってるよね。

それから、圧倒的な質量感っていうのかな。
画面に重さがあるんだよね。

暗さと爆発の閃光の露出のバランスとか、被写体の動くスピードとレンズの焦点距離の関係とか、画面の構図とか、カット割りとか。
いちいち、きちんとデザインされててにくたらしい。
映画を映像エンターテインメントとして突き詰めると、こういう形もありですなぁ、って思わせるよ。
(だからJ.J.エイブラムスが「スタートレック」を撮るって聞いた時、期待したんだけど)

小さい頃、怪獣映画とか見てエキサイトしたでしょ。
見せ場はやっぱり、ヒーローと怪獣との格闘シーンで。
そこにストーリーなんてないし、絶対ヒーローが勝つって分かってるのに手のひらびっしょりだった。
あの感じね。

だからね。
わけわかんない虫みたいのにかまれて、出血症で死んじゃう。
その理由なんていいの。
鉄骨が肩に刺さってた人間が全力で走れるの?とか。
それもいいの。

ストーリーじゃなくて刺激的な場面の連続。
次々と巻き起こるエピソードのシークェンス。
それがこの映画の魅力だと思うよ。

ストーリーがないから感情が揺さぶられることはないよ。
主人公に感情移入できないから、ジェイソンが死んじゃっても泣いたりできないし。
それよりも映像を見て「すげ~~~」って口開きっぱなしなんだよね。
感じるコトじゃなくて、見ることが楽しい映画。

エンディングテーマは伊福部フレイバー全開。
完全にゴジラへのオマージュ。
公開された時「この映画はニューヨークにゴジラが上陸したらどうなるかを描いた」って言われたよね。
けど、僕はそうは思わなかった。
日本にはゴジラがいるけど、アメリカにも国民的怪獣がいるよね。
キングコング。

ゴジラにインスパイアされたけど、キングコングがもう一度ニューヨークを襲ったとしたら。
しかも今度は南の島じゃなくて、宇宙からやってきたら?
その時、一市民の目に騒動はどう写るか、ってのがベースにあるような気がするよね。

パニック・アクションとか、新感覚の一人称的映像とか、いろいろ言われたけどね。
良くできた怪獣映画だと思うな。
文句なしに男子ムービー。
間違ってもつきあい始めた彼女と一緒に見ようとはしないこと。
こんな怪獣映画で喜んでるのがバレたら、バカだと思われてフラれるよ。

だからDVDを観るなら1人で。
完全にハッドの目線でロブを追いかけるのがオススメ。
デカイ音で見た方がいいから大口径の密閉式ヘッドフォンはマストアイテムだよ。

星の数はね~~

★★★★

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09.06.17 スタートレック [本や映画、音]

見てきた。

STARTREK.jpg
カーク船長、なんか企んでる?


元々は監督がJ.J.エイブラムスだってことで劇場直行。
世間の評価はまっぷたつだったけど、以前の「クローバーフィールド/HAKAISHA」は個人的にはドストライク。
めちゃくちゃおもしろかった。
DVDも速攻で買ったしね。

あのスケール感でスタートレック作っちゃうの?
んなことしたらヤバイでしょエイブラムス〜。
しかも予告編がすごくよくできてて。
エンタープライズ号の外装を溶接してるなんて、ちょっと震えた。
リアルじゃん、って。
と同時に。あ〜、宇宙「船」なんだぁ〜って思ったよ。
あんなに巨大な乗り物は、船しかないよね。

僕自身はトレッキーじゃないから映画についていけるか不安だったけど、関係なかったよ。
スタートレックのこと、全然知らなくてもOK。
よくできたハリウッドモノとして楽しめる。

もしもスタートレックのこと知ってたら、もっとOK。
細かい部分でいろんな仕掛けがしてあるから、
クスッと笑ったり驚いたり、感心したりできる。

あとドクター・マッコイとかスポックとか、スコッティとか。
良くもまぁ、こんだけ特徴を捉えた人をキャスティングしたな~って感心する。
(ほとんど無名に近い役者さんたちだよ。スコッティは『ホット・ファズ』で主演したサイモン・ペグだったけどね)

そっくりである必要なし。
特徴が重なって、そっからイメージできれば十分。
似顔絵の論理だね。
(20世紀少年のキャスティングをした人は見習うべき)

あるいはその特徴を再現した、役者の演技力の勝利。
(20世紀少年に出てる人は見習うべき)

ってか、そのへんが分かってる監督の賢さ。
(20世紀少年の……)


映画自体は疾走感たっぷり。
最初の5分で完全に泣いたよ。
(余談だけど、最初の5分をクローズアップすると「アルマゲドン」になるね)

その時の船長の姿が、映画の中盤で語られる船長としての資質にビタビタ。
つまりこれは闘いを経て父親を越えていくイニシエーションの物語なんだよ、ってことだね。
だから絶対に主人公は船長にならないといけないし、最終的には父親以上の偉大な働きをして、それがみんなに認められないといけない。そうしてなめ腐った態度だった若者は、尊敬を得て誇り高い男になる、と。

そんな具合に設定はベタベタ。けどベタだからこそ。スタートレックをしらない人にも状況をパーフェクトに理解させて、一気に映画に引きこむよ。
ベタの使い方が上手い。
よくできた脚本ってのはこういうことなんだと思う。

ストーリーはネタバレになるかも、だから書かないけど。
何気ないことが複線になってて、ちゃんとそれが回収される。
スポックの悩みも、カークの反骨心も、マッコイの不安症も、スコッティの脳天気さも。
個人にとっては悩みでも、それらはすべて個性となって特徴となって仲間を助けるよ。
チームって最高!

もしかしたら敵の親玉が怒ってる理由がよく分からないかもしれない。何か見逃した?って思うかもしれないけどね。
見てるうちに分かるから。そのままスルーしちゃって。
(その、敵の親玉が怒ってる理由ってのがストーリーのキモだよ)

あと、SFものはどうしても説明しないと分かってもらえない、っていう小難しい事柄があるよね。
そこらへんをズバッと切り捨てて
「こういうコトっす、今回は!」
って言い切ってるところが良いよ。
結果的にそれが、映画として再構成されたスタートレックのハードルを下げて、みんなが楽しめるようになってるから。
(どしても矛盾はあるけど、それは気にしないお約束。時代劇のカツラの境目と一緒)

宇宙戦のシーンは思ってるほど多くないけど、それがかえっていい。もともとこのシリーズは人間ドラマだから。
それにエンタープライズ号は戦争をしに行ってるんじゃなくて、調査船だからね。
攻撃されない限りは攻撃しないのだ。
そんかし、やられたら徹底的にやる。仲間を守るために。
銃や砲や魚雷を使うのはそういう時だけだから。

そうそう。今回の映画は、テレビで放映したスタートレック(最初のシリーズのタイトルは「宇宙大作戦」だったね)とは登場人物の名前が違うよ。テレビは吹き替えだったせいかな。

<宇宙大作戦>  <スタートレック>
チャーリー    スコッティ
ミスター・カトウ スールー
ウラ       ウフーラ

ミスター・カトウはいつまでたっても出てこないから注意ね。

ラストには「宇宙大作戦」のあのナレーションと音楽が流れるよ。
つまり、この映画が終わって「宇宙大作戦」が始まるってこと。

だけどね。
この映画と「宇宙大作戦」の間には、ちょっと時間がある。
カーク船長もまだ若いし。
もしかして、もう1作くらい作ろうとしてない? エイブラムス〜。

総合的に超グッド。DVD出たら絶対買う。
ただし。
デートムービーじゃないからね。そこんとこは気をつけて。あくまで男子ムービー。
金曜の夜に仲間とビールを飲んで、その勢いで出かけるのをすすめるよ。

星の数、聞きたい?



★★★★★

09.06.11 「ぼくと1ルピーの神様」 [本や映画、音]

週に何日か都心に通ってた時には、電車の中が読書タイムだったよ。
ところが郊外にひっこして自宅で作業することになったら、
とたんに本を読む時間がなくなった。
ってか、本を読むタイミングがなくなったんだよね。
目の前に仕事があると、ついついしちゃうから。

なもんで、最近読書量が減ってるけど。
これは面白くて一気に読んだ。久々に気持ちのいい物語。


「ぼくと1ルピーの神様」



映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作。
だけどお話しとしてはまったく、っていいほど別物。
主人公の名前とか違うしね。あと登場人物の構成も。

原作っていうか、この物語をベースにして、ストーリーの背骨(ってか部品?)だけ上手く使って、映画っていう形に再構成したのが「スラムドッグ$ミリオネア」かな。
こういう、物語をベースにして「映画」っていうメディアに作り直していくのは正しいと思う。

だって映画はどうしても90分くらいで話を終わらせないといけないからね。
時間軸に沿って限られた枠の中に起承転結を詰め込まないといけない。
さらに分かりやすくないといけない。
「今のところ、もういっかい!」はないから。
けど、本は戻れるし、いくらでも時間をかけられるからね。
どうしても本の方が長くなるよね。
それをそのまま映画って形に当てはめようとすると、20世紀少年とかみたいになっちゃう。
駆け足すぎて内容ねぇ〜〜。

「ぼくと1ルピーの神様」は人間描写だけじゃなく、1回目のガイドがどんなにひどかったとか、大好きな人が死んでいくのを見守る様子とか、映画からはくみとれないディティールが生き生きとしてて良かった。
あと、主人公がどうして逮捕されなきゃいけなかったのかとか。
そのあたりの説明に筋が通ってて納得できるよ。
インドの人の名前がなかなか頭に入ってこなかったのが唯一の難点。
日を空けて読むと
「この人、誰?」ってなっちゃう。

で、思ったんだけどね。
もしかしたら映画は物語のおもしろさってことじゃなくて、
あの番組のフォーマットと緊張感で見せられちゃったのかな、と。
あの回答者を追い詰めていく緊張感があるからこそ、
主人公が一攫千金を目前にしてエキサイトしない妙な落ち着きが際だってくる。
同時に、華やかなクイズ番組の中で、答を知ることになった悲しい過去が前面に押し出される。
映画が高評なのは、「あの」クイズ番組のフォーマットがすごく良くできてるんじゃないだろうかっていう気もしたよ。

それぞれに面白いから、両方同じように楽しめると思う。
映画は映画で良くできてるし、本は本で濃い。

順番としては映画→本、がオススメ。
(そのほうが、タージマハールの美しさの描写とかよく分かるから)


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