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09.08.19 「眼の誕生」アンドリュー・パーカー [本や映画、音]

今から5億4200万年前から5億3,000万年前。カンブリア期って言われる時期に、いきなり生物が大進化を遂げてたくさん現れたよ!

そりゃもうどえらい勢いで進化して驚くほど生息数が増えちゃったから「カンブリア爆発」なんてレペゼン岡本太郎的な呼び方までしちゃうくらい。

現れた生物も多種多様。
アノマロカリス こーゆーのとか。

こーゆーのとか。


想像のはるか斜め上を行くデザイン。なんじゃこりゃ的生物が山盛り。
いったいこのカンブリア爆発って何? どうしてこんなことが起こったんだろう? いったい何が原因?
そんなことをしっかり解き明かしてくれる本。



もう3回くらい読んでるけど、読むたびに感心するね。
まず著者のアンドリュー・パーカーは「カンブリア爆発とは何か」を定義することから始めるよ。

「カンブリア爆発」以前、生物の化石はほとんど見つからなかった。ところがある時期を堺に、いきなりたくさんの生物の化石が見つるようになったわけ。
だからエライ先生たちはこう考えてたよ。
「おお! いきなり生物の数が増えたです!! 進化は爆発だぁ!!!」

だけどアンドリューはそうじゃねぇだろ、って言うね。
「事実は化石がたくさん見つかるようになった、ってことで、それは化石化しやすい生物が多くなったってことなんじゃね?」

今じゃ、この説はかなり有力。アンドリューは続けるよ。
「生き物が進化するのはそんなにイージーじゃねぇよ。だいたい身体の内側の構造を変えるのは大変なんだから。そうじゃなくて、身体の外側が固い構造の生き物が増えたってことなんじゃね? 身体の内側を変更するより、その方が簡単じゃん。簡単な方から考えようよ」
って。

さらにアンドリューは
「この時期までに生物の『門(分類学上の区切りのひとつね)』はほとんど出尽くしてて、生き物としてのラインナップは揃ってた。だけどみんな柔らかい身体しか持ってなかったんだよ。だけどある日、鎧甲に身を固めたヤツらが現れた。で、ドミノ式にみんな固い身体を備えることになっちゃった。で、化石がたくさん残った。それが「カンブリア爆発」なんじゃね?」
って。

カンブリア爆発は生物の門が突如として増えたんじゃなくて、生物が一斉に固い殻や外骨格やアゴやトゲを身体の外側に装備した時期だったんだ、ってね。

んじゃ、何でそんなことになったのか?
それは生物の第1原則を刺激される、つまり殺されちゃうかもしれないっていう生物にとって最大の刺激が発生したから。

それまでも捕食者はいたけど、すっごくスローだった。受動的でさえあった。
ところが積極的に捕食活動を展開する生き物が現れた。
こうして食うものと食われるものという関係ができあがった。
その関係を作り上げたのが光であり、光によって得物を察知する「眼」という器官の発生によるものだ、ってのがアンドリューの主張。

途中で出てくる構造色の話とか、中学の物理をしっかりやってないと辛いかもだけどね。
光っていうどこに出もある刺激が生物の進化を促進する「淘汰圧」として働くこと。
さらに「色」は自然界の中にはなく、ものを見ている生物の「脳」の中にしかないこと。
そしてカンブリア爆発の頃の生物はどんな色をしていたか。
単眼や複眼など、生物の生活様式は眼の構造をどこまで決定づけるのか、などなど。

文章もおもしろいし、章ごとに話が完結するから理解しやすい。
(時々、あらぬ方向に話が飛んで脱線するけどね)

でね、読んだ後は自分が見てるものが今ひとつ信用できなくなる。
これはオレの目が見てるのか、脳が見てるのか?ってね。
と同時に、生物ごとに見てる光が違うってことや、カナブンの緑がかった甲羅の構造色に感心したりするよ。

科学と動物とむかしの生き物が好きな人にはおすすめ。


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