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10.06.04 フェルマーの最終定理 [本や映画、音]

ピタゴラスの定理ってあるっしょ。

直角三角形において、斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい、ってやつ。
100604-1.jpg
これね。

この式にバッチリはまる数を「ピタゴラスの三つ組み数」っていうんだけど。
たとえば
3・4・5の組み合わせ。
あとは
5・12・13
とか。

ピタゴラス先生の活躍してた紀元前500年頃だと、この三つ組み数は実際に計算してみないと分からなかったから、当てはまる数字を見つけ出すのは大変だったらしいよ。
だからこそ、ドンピシャではまる数字を見つけたときには嬉しかっただろうし、そのハマりぐあいに美しさを感じ取っただろうね。

で、二乗であてはまる数があるんなら三乗や四乗でもいけるんじゃね?
そう思ってピタゴラス先生以下、門下生たちも「三乗の三つ組み数」や「四乗の三つ組み数」を探したんだけど。
なかなか発見できなかった。
なんせ三乗とか四乗だから。こりゃきっとものすごく大きな数字がはまるんじゃね?
そこまではなかなかたどり着けないってことなんじゃね?って話になったんだろうな。

さて。それから2100年くらい経った17世紀。
フランスに、ピエール・ド・フェルマーっていう数学の大天才がいた。
んでもってフェルマーったら変わりもんだからね。
本を読んでて思いついたことがあると、読んでる本の余白にちょちょっと書き付けたりしてた。

フェルマーもこのピタゴラスを定理をいじくってて、感動したんだよね。
だって指数が二乗だと答えは無限にあるのに、三乗にしたとたんなっかなか答えが見つからない。
っていうか、答えがないように見える。
二乗が三乗になっただけなのにね。

で、フェルマーは古代ギリシアの数学者、ディオファントスの「算術」って本を読んでるときに思いついちゃったんだよ。

100604-2.jpg

nが3以上の時には、この数式を満たす整数解はない、って。
なもんだから読んでた「算術」の余白に
「答えはないよ」
って書いたんだよね。
で、そこにはこう添えた。

「私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
(引用元/新潮文庫『フェルマーの最終定理』P118  サイモン・シン:著 青木 薫:訳)

ちょwwwwww、フェルマー。
それなら他んとこにきちんと書いとけ!って話なんだけど。
フェルマーって人はその証明を世に発表する気なんてなかったみたい。
それが1650年頃の話。

こうして謎が残った。
3以上の自然数nについて
100604-2.jpg

が成り立つ0ではない自然数(x, y, z)の組み合わせは存在しない。

フェルマーはそれを証明したっていうけれど、その証明は正しいのか。
だとしたらその証明はいかなるものか。

これが「フェルマーの最終定理」って呼ばれる数式。
長い間、証明も反駁もされなかった数式だけど、1995年にアンドリュー・ワイルズっていうイギリスの数学者が証明に成功した。
なんとフェルマーが証明したって言ってから350年。
ピタゴラスの定理が生まれてから2500年も経ってる。



この本『フェルマーの最終定理』は、この数式がいかに生み出され、いかに多くの数学者たちを虜にし、苦しめ、そしてアンドリュー・ワイルズがいかにして証明に至ったかの物語。
ピタゴラスの定理を説明する部分では見事な証明と、ピタゴラスを取り巻いていた当時の状況を描き出す歴史的描写。
さらには「ピタゴラスの三つ組み数」や「素数」「完全数」「社交数」「友愛数」なんていう「数」に魅せられた人たちが知識欲を満たす喜びに震え、オイラーやラグランジュといった名だたる天才たちが難問を前に戸惑う様子を記す。
そうしてついにはエニグマの暗号解読に貢献したアラン・チューリングまでもを引き出す広範囲な取材。
さらには複雑な数式をたとえ話でかみくだいて説明する親切さ、などなど。
著者のサイモン・シンは科学系のライターとして活躍する人だって。
いやいやどうして。翻訳の妙も加わって、「フェルマーの最終定理」っていう超ビッグな問題に人類がつぎつぎに挑んでいく様子がサスペンス仕立てで綴られていくよ。
あんまりおもしろくって一気に読んだ。

途中でどうしても難しい話になることはあるけどね。
そこは巻末に補遺があるから大丈夫。
きちんと理解するのに時間がかかるパートもあるけど、理解しながら読まないとその先の感動が味わえない。
一気に読んでも急いで読むのはおすすめしないタイプの本だよ。

ま、ちょっと数学とか好きな人なら巻頭部分のピタゴラスのお話なんてワックワクもんだと思うしね。
だってさ、数字にこんな規則性が隠されてたなんて!
素数の美しさとか、そこんとこだけ何度も読み返してはすげーって言ってニコニコしちゃった。
いや、マジでこれは中学生くらいの時に勉強したかったなぁ。
そしたらこの感動はもっと大きかったと思うよ。

アンドリュー・ワイルズは人間の知識とイマジネーションがどこまで広がるかを「数学」で証明してみせた。
その証明の基礎になった部分には、日本人数学者の谷山豊さんと志村五郎さんによる「谷山・志村予想(当時は予想だったけど、現在は証明済み。だから「谷山・志村の定理」って呼ばれてる)」が大事な役割を果たしてる。
数学の証明は、証明されたことの積み重ね。
つまり先人の仕事が次の世代の礎になる。
フェルマーの最終定理が証明されるには、ピタゴラスの時代から数えて2500年分の学問が必要だったんだね。

なんという壮大なクイズ!





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